1日目

BGM

俺は今日も、あの神社へと続く石段を上る。
山の麓にあるそこには、一人の足跡が続くぐらいだ。

ただ、どうしてだろうか、その足跡でさえ俺は見失ってしまう。
その神社には誰もいない。荒れてしまった残骸が、取り残された過去だけが、ひどく夕陽に晒されている。

shrine_evening

俺は、向かって左隅にある木製のベンチへと向かい、そこに腰を下ろした。
手提げの中を覗き込んだが、やはり、そこは空っぽである。
閑寂とした空気の中に風が流れ、手提げに縛られた、色褪せたお守りが細やかに揺れていた。

・・・

しばらくすると風は弱くなり、俺は腰を持ち上げて左手にある賽銭箱へと向かった。

ポケットから硬貨を取り出し、そこへ放り入れる。

硬貨を入れる

そして、そばにあった本坪鈴から垂れた紐を揺らして鈴を鳴らした。

鈴を鳴らす

後ろを振り向けば、蜜柑色の冷えた空が広がっていた。

shrine_torii_evening

『君は待っていてくれるのだろうか。』

それから少し、視線をそらした。